HPLCを用いたニクジュヨウの8-epiloganic acidの定量分析

【要旨】水、20%及び50%メタノールの抽出効率はほぼ同じであり、80%と100%メタノールより効果はよかったと判明。カンカ、ニクジュヨウなど3種の生薬のEchinacoside 含量は異なるが、8-epiloganic acid の品種間差異は殆ど確認できなかった。

熱娜·卡斯木**,楊建華,堵年生,胡君萍,王青
(新疆医科大学薬学院 ウルムチ  830054)

要約  目的HPLCを用いた多種類のニクジュヨウに含有する8-epiloganic acidの定量分析 方法Hypersil ODS-2カラム (4.6 mm×250 mm,5 μm),溶離液はアセトニトリル-0.4%リン酸 (9:91),流速1.0 mL·min-1,カラム温度25 ℃,測定波長235 nm. 結果8-epiloganic acid は0.06~0.48 μg の範囲で良好な直線関係を示し(r=0.9999);平均回収率は98.0%,RSD=2.2%(n=5).結論:本分析方法は快速で,感度が良く,正確であり,ニクジュヨウ生薬の品質管理に応用できる.

キーワード:ニクジュヨウ属;カンカニクジュヨウ;ニクジュヨウ;塩生ニクジュヨウ;8-epiloganic acid;高速液体クロマトグラフィ

RP-HPLC Determination of 8-Epiloganic Acid in Herba Cistanches

RENA·Kasimu, YANG Jian-hua, DU Nian-sheng,  HU Jun-ping, WANG Qing
(Pharmacy College, Xinjiang Medical University, Urumqi  830054, China)

Abstract Objective: To establish an RP-HPLC method for determination of 8-epiloganic acid in Herba Cistanches. Method: The analysis was carried on a Hypersil ODS-2 column (4.6 mm×250 mm,5 μm) eluted with mobile phase consisted of acetonitrile and 0.4% phosphoric acid (9:91) at the column temperature 25 ℃. The flow rate was 1.0 mL·min-1 and determination wavelength was 235 nm. Results: 8-Epiloganic was proved to be linear in the range of 0.06~0.48 μg with a regression coefficient of 0.9999, the average recovery was 98.0% with RSD of 2.2% (n=5). Conclusion: The method is proved to be quick, simple and high sensitive.

Key words: Herba Cistanches; Cistanche tubulosa R. Wight; Cistanche deserticola Y. C. Ma; Cistanche salsa (C. A. Mey.) G. Beck; 8-epiloganic acid; RP- HPLC

ニクジュヨウ属Cistanche Hoffmg. et Linkはハマウツボ科Orobanchacea多年生草本寄生植物で,我が国には4種と1変種が分布している[1].現在市場で流通している生薬品種はカンカニクジュヨウCistanche tubulosa R. Wight,ニクジュヨウCistanche deserticola Y. C. Maと塩生ニクジュヨウCistanche salsa (C. A. Mey.) G. Beckである.ニクジュヨウは補腎陽,益精血,潤腸通便等の効果があり,貴重な伝承漢方薬である.“砂漠人参”との美称もある.イリドイド化合物は本属植物の主要化学成分の一つであり,すでに12種類のイリドイド化合物が報告されている[2].イリドイド化合物は植物界に多く含まれ,植物分類学での応用や多種多様な生物活性があるため,研究が盛んである.イリドイド化合物は抗菌,抗ウイルス,抗酸化,肝臓保護,利胆,便秘解消及び鎮静などの生物活性が報告されている[3]

2000,2005年版《中国薬典》のニクジュヨウの“含量測定項”にはEchinacosideとActeosideを指標物質として生薬の品質をコントロールしていた.文献に記載されている品質コントロールについての研究も主にこの2種のフェニルエタノイド類化合物に集中していて[4-6],イリドイド類化合物の定量分析は殆どなかった.8-epiloganic acidはニクジュヨウ属植物に含まれる主要イリドイド類化合物である.我々はそれを指標物質としたHPLCによる定量法を開発し,3種のニクジュヨウ生薬の8-epiloganic acid含量を明らかにし,生薬の品質評価の方法として提供する.

1 機器と試薬

Waters 2690高速液体クロマトグラフ(オートサンプラ付き),Waters 2487紫外可視分光光度計,Waters Millennium32システムコントローラ.8-epiloganic acid対照品(本実験室製,UV、IR、EI-MS、1HNMR、13CNMRより同定[7],HPLC面積百分率法より純度は97%以上である).カンカニクジュヨウ(新疆和田地区)、ニクジュヨウ(内モングル阿拉善盟)、塩生ニクジュヨウ(新疆吉木薩尓地区)の品種は、新疆中薬民族薬研究所の李佳政研究員より鑑定された.アセトニトリルはクロマトグラフィ用,水は蒸留水,他の試薬はAR級.

2 測定条件 

カラム:Hypersil ODS-2 (4.6 mm×200 mm,5 μm);溶離液:アセトニトリル―0.4%リン酸水溶液(9:91);流速1.0 mL·min-1;カラム温度25 ℃;測定波長235 nm.上記条件で,3種類の生薬中に含有する8-epiloganic acid と他の成分の分離能が良いことが確認された(図1).

図1 対照品および各種ニクジュヨウのHPLCパターン

図1 対照品および各種ニクジュヨウのHPLCパターン

図1 対照品及び各種ニクジュヨウのHPLCパターン
Fig 1  Chromatograms of reference substance and samples

A 対照品(reference substance)  B.カンカニクジュヨウ(C. tubulosa)  C.ニクジュヨウ(C. deserticola)  D.塩生ニクジュヨウ(C. salsa)

1.     8-epiloganic acid

 3 直線性考察

8-epiloganic acidを精密に称取し,50%メタノールで25mlに定容し,0.06 mg·mL-1の対照品溶液を得た.対照品溶液を精密に1,2,3,4,5,6,7,8 μL,注入し,絶対注入量(μg)を横軸にとり,ピーク面積を縦軸にし,得られた回帰方程式は:

Y =1.563×106X-2.075×10r=0.9999

その結果,8-epiloganic acid は0.06~0.48 μgの範囲内で良好な直線関係を示した.

4 検出限度 

ベースラインノイズの3倍を最低検出限度に設定し,本分析方法にて測定した結果,8-epiloganic acidの検出限度は2.0 ngであった.

5 精密度

8-epiloganic acid対照品標準液の1 μLを繰り返し5回注入し,ピークの面積よりRSDは0.9%と算出した.

6 安定性

カンカニクジュヨウ0.30 gを秤取し,下記“試料分析”項の記載方法より試料液を作成し,0,2,4,6,8,12 時間後10 μLずつ注入し,ピークの面積を測定する.その結果,試料液は12時間以内に安定を保持すると認められ,RSDは0.7%であった.

7 再現性

カンカニクジュヨウ0.30 gを秤取し,下記“試料分析”項の記載方法より試料液を五つ作成し,上記分析条件で測定した結果,RSDは0.8%であり,良好な再現性を示した.

8 回収率

カンカニクジュヨウ0.15 gを5回分秤取し,25mlに定容し,それぞれ0.176 mg·mL-1の対照品標準液を1 mL添加し, “試料分析”項と同じ操作をした結果,平均回収率は98.0%,RSDは2.2%であった.

9 試料分析

乾燥したカンカニクジュヨウ,ニクジュヨウ,塩生ニクジュヨウを粉砕し,40メッシュの篩に通った分からそれぞれ0.3 g秤取し,25mlのメスフラスコに入れ,50%のメタノールを加え,30 min超音波抽出してから50%のメタノールで25mlに定容し,0.45 μm面ブランフィルターでろ過したものを試料液とした.各試料液を10 μL注入し,ピーク面積を測定し,検量線より8-epiloganic acidの含量を算出した(表1).

試料測定結果n=3
Tab1 Results of sample determination

試料番号 カンカニクジュヨウ
(C.tubulosa)
ニクジュヨウ
(C.deserticola)
塩生ニクジュヨウ
(C.salsa)
(sample No.) 含量(content)% RSD% 含量(content)% RSD% 含量(content)% RSD%
1 0.0525 1.1 0.0542 1.0 0.0447 0.3
2 0.0527 0.6 0.0540 1.1 0.0439 0.9
3 0.0524 0.9 0.0549 0.7 0.0437 0.5
4 0.0519 1.0 0.0537 0.7 0.0445 1.1
5 0.0514 0.5 0.0536 1.0 0.0431 0.2

10 考察

10.1  中国薬典2005年版のニクジュヨウ項目には法定品種としてカンカニクジュヨウとニクジュヨウしか収載していない.しかしながら,本草学考証より[1],歴代本草に記載されているニクジュヨウの原植物はニクジュヨウと塩生ニクジュヨウであるため,本試験に塩生ニクジュヨウも加えて検討した.

10.2  超音波による30分間振とう抽出において,水,20%,50%,80%,100%メタノール溶液の抽出方法を検討したところ,水,20%及び50%メタノールの抽出効率はほぼ同じであり,80%と100%メタノールより効果はよかったと判明した.イリドイド類化合物は水或いは希アルコール溶液に加水分解されやすい性質があるため,抽出効率と安定性を総合的に考え50%メタノールを用いることにした.超音波抽出時間の30と40 minの抽出効率も検討したが,著しい差異はなかったため,抽出時間を30 minにした.以上の結果から,抽出方法を50%メタノールの30 min超音波振とう抽出に定めた.

10.3 8-epiloganic acid は各種類のニクジュヨウ属植物に含有する上,多種多様な生物活性も有するので,8-epiloganic acid の含量もニクジュヨウ生薬の品質を反映できる.

10.4 3種の生薬のEchinacoside 含量は異なるが,本試験の結果,8-epiloganic acid の品種間差異は殆ど確認できなかった.含有量は0.04%~0.06%.

10.5  8-epiloganic acidの紫外吸収スペクトルの最大吸収波長は(235±2)nmであるため,測定波長を 235 nmとした.

参考文献

  1. TU Peng-fei(屠鹏飞), HE Yang-ping(何燕萍), LOU Zhi-cen(楼之岑). Survey and protection of medicinal resources of Desertliving Cistanche (肉苁蓉类药源调查与资源保护). Chin Tradit Herb Drugs(中草药), 1994, 24(4): 205
  2. LEI Li(雷丽), SONG Zhi-hong(宋志宏), TU Peng-fei(屠鹏飞). Advances in research of chemical constituents in plants of Cistanche Hoffing. et Link (肉苁蓉属植物的化学成分研究进展). Chin Tradit Herb Drugs(中草药), 2003, 34(5): 473
  3. DONG Juan-e(董娟娥), ZHANG Jing(张靖). Advances in the research of iridoids occurring in plants(植物中环烯醚萜化合物研究进展). J Northwest Forestry Univ (西北林学院学报), 2004, 19(3): 131
  4. ZHANG Xuan(张烜), LI Xin(李鑫), RENA Kasimu(热娜·卡斯木), et al. RP-HPLC determination of echinacoside and acteoside in herba Cistanches cultivated on different parasitic species and habitats(RP-HPLC法测定不同寄主和不同产地肉苁蓉中松果菊苷和麦角甾苷的含量). Chin J Pharm Anal(药物分析杂志), 2003, 23(4): 254
  5. ZHANG Si-ju(张思巨), LIU Li(刘丽), YU Jiang-yong(于江泳), et al. A RP-HPLC method for stimutaneous determination of echinacoside and acteoside in herba Cistanches(HPLC同时测定肉苁蓉药材中松果菊苷和麦角甾苷的含量). Chin Pharm J(中国药学杂志), 2004, 39(10): 740
  6. WANG Yi-Ming(王义明), ZHANG Si-ju(张思巨), LUO Guo-an(罗国安), et al. Analysis of phenylethanoid glycosides in the extract of herba Cistanchis by LC/ ESI- MS/ MS(用LC/ ESI- MS/ MS研究肉苁蓉与其代用品中的苯乙醇苷类化合物). Acta Pharm Sin(药学学报), 2000, 35(11): 839
  7. Kobayashi H, komatsu J. Studies on the constituents of Cistanchis herba (Ⅰ). Yakugaku Zasshi, 1983, 103(5): 508