カンカ抽出物を投与した群では高塩分飼料飼育ラットの血圧が有意に正常化し、血圧を低下させる。カンカ抽出物の中用量と高用量投与群では赤血球膜流動性が増加した。また、低用量と高用量投与群では血液粘度が低下した。以上より、カンカ抽出物には高血圧低下作用が認められた。
1新疆中薬民族約薬研究所 ウルムチ 830002,
2 北京大学天然薬物予防生薬物国家重点実験室 北京 100083
熊 元君1, ○賈 暁光1, 李 勇1, 盧 景芳2
要旨:
(目的)
カンカニクジュヨウ抽出物の高塩分飼料飼育ラットの血圧、赤血球膜流動性および血液粘度におよぼす影響について検討した。
(方法)
ラット血圧は非侵襲型動物血圧測定計により測定した。赤血球膜流動性はEPR、血液粘度は血液レオロジー測定計により測定した。
(結果)
- カンカニクジュヨウ抽出物は高塩分飼料飼育ラットの血圧を有意に低下させた。
- 同抽出物は赤血球膜流動性を高めた。
- 同抽出物は血液粘度を低下させた。
(結論)カンカニクジュヨウは血圧を低下させ、細胞膜流動性を高めた。
キーワード: 抽出物;カンカニクジュヨウ;細胞膜流動性;血液粘度
1.緒言
カンカニクジュヨウはタマリスク種植物の根部に寄生する寄生植物で、インポテンス、不妊、足腰の痛みや便秘などを引き起こす腎虚症に有効なニクジュヨウと同等の効果が認められている。カンカニクジュヨウは2005年に中国薬典に薬用植物として収載され、日本では機能性食品として応用されている。
今回は高塩分飼料飼育ラットの血圧、赤血球膜流動性および血液粘度におよぼす影響について検討した。
2.実験方法
2.1 材料
カンカニクジュヨウ抽出物は多孔性吸着樹脂を用いてエタノール抽出した調製品をXinjiang He-tian Dichen Biotechnology Ltd.より入手した。(Lot No:20070620,原生薬抽出比50:1,Echinacoside & Acteoside=66.1%).
2.2 試薬
スピンラベル法で用いた5DS(5-doxyl-stearlic acid methyl-ester)はシグマ社より入手し、使用直前にエタノールに溶解して実験に用いた。 その他の試薬は分析用試薬を使用した。
2.3 実験動物
体重160~200 g のSD系雄性ラット(SPF)はLaboratory Animal Research Center of XinJiang Medical Universityより入手した。(Production license:SYXK 2003-2001;Use license:SYXK 2005-2004)
2.4 実験装置
非侵襲型動物血圧測定計:BP-6(Chendu Taimen technical Ltd.);電子スピン共鳴装置:ESP-300(Germany Bruker Co.);大容量冷却遠心分離機;XL-8(Beckman Coulter Ltd.); 自動血液レオロジー分析計;SA-600(BeiJin SUCCESS Technology Development Co.,Ltd)
3. 高塩分飼料飼育ラットの血圧、赤血球膜流動性および血液粘度の測定
3.1 高塩分飼料飼育ラットの飼育と血圧測定
50匹のSD系雄性ラットを無作為に5群に分けて、正常群を除く全ての群を8%の塩分を含む高塩分飼料で40日間飼育して血圧を計測した。その結果、高塩分飼料で飼育したラットは、全て、正常群と比べて明らかに血圧が上昇した。その後、更に高塩分飼料でラットを飼育しながら3用量のカンカニクジュヨウ抽出物を毎日1回、18日間連日投与して血圧(Table 1)、赤血球膜流動性(Table 2)、および血液粘度(Table 3)を測定した。
3.2 赤血球膜流動性の測定方法
ラットから採血した血液は4℃の冷蔵庫内で12時間保存した。上澄に集まった白血球を吸引ピペットで分取した。赤血球は、PBS( 40 tims, 0.05 mol·L-1 ,pH=8.0)を添加して同じ群の赤血球を合わせて、その都度、遠心分離し(4℃,12000 r·min-1,10 min)細胞密度が5~8×107mL –1となるようにHanks液で調整した。その後、少量のPBS(0.05 mol·L-1,pH=7.4)を加えて試験管に移し、攪拌後に-20℃の遠心分離機に装着した。
250µLの凍らせずに混合した赤血球膜を遠心分離用試験管に分取し、25µLの5-DS溶液(1.3mmol·L-1)を加え、更にPBS溶液(0.05 mol·L-1,pH=7.4)を加えて1.0 mlとした。攪拌後、氷水中に3分間静置した後に4℃で一夜放置した。翌日、遠心分離し(4000 r·min-1 ,3 min)、上澄の吸収がなくなるまで十分に洗浄後、ESP測定用の石英管に分取した。
3.3 ESR測定および計算方法
ESRの測定はBRUKER ESP 300 X-band spectrometerを用いて行った。ESR 信号は入射マイクロ波出力20 Mw、周波数100 kHz、磁場2Gの条件で測定した。磁場変調幅は150G、central field 3500Gで計測した。得られたESRスペクトルはPCに保存し、処理した。秩序度(S)はESRスペクトルを基に方程式より求めた。
S=0.568× 3( A//¢ – A^¢) / [( A//¢ +2A^¢)],S値は膜流動性に逆比例する
4. 結果
Tabl 1. ラット血圧におよぼすカンカニクジュヨウ抽出物の影響( ±SD,n=10)
Group |
Dose (g/mL) |
BP pretreatment (mmHg) |
BP after tratment (mmHg) |
Control |
156.93±14.04 | 130.08±5.66 | |
Model |
176.30±16.02** | 170.53±13.62** | |
L |
0.15 | 181.32±22.53** | 154.42±15.20**# |
M |
0.30 | 182.44±8.74** | 130.45±9.48## |
H |
0.60 | 178.91±11.24** | 129.54±11.31## |
*P<0.05 **P<0.01 vs control group #P<0.05 ##P<0.01 vs model group
カンカニクジュヨウ抽出物は高塩分飼料飼育ラットの血圧を有意に低下した。(P<0.01)
Tabl 2. カンカニクジュヨウ抽出物の赤血球膜流動性におよぼす影響( ±SD,n≥2)
Group |
Dose(g/ml) |
S |
Control |
0.7696±0.0244 | |
Model |
0.8632±0.0389** | |
L |
0.15 | 0.8402±0.0394** |
M |
0.30 | 0.7966±0.0143**## |
H |
0.60 | 0.7992±0.0175**## |
*P<0.05 **P<0.01 vs control group #P<0.05 ##P<0.01 vs model group
カンカニクジュヨウ抽出物はラット赤血球膜流動性を増加した。(P<0.01)
Tabl 3.カンカニクジュヨウ抽出物の血液粘度におよぼす影響( ±SD,n=10)
whole 血液粘度(mp.s) |
|||||
1.00 |
5.00 |
Group |
200.00 |
Aggregation index of RBC |
|
Control |
41.19±10.43 |
14.85±3.25 |
6.90±1.29 |
4.45±4.45 |
9.06±1.43 |
Model |
80.65±32.24** |
26.52±9.26** |
11.02±3.16** |
6.50±6.56 |
11.99±2.68** |
L |
59.29±22.99*# |
19.60±5.97*# |
8.22±1.69*# |
4.89±0.66 |
11.85±3.37* |
M |
66.73±18.91**# |
21.98±5.25** |
9.26±1.72** |
5.52±0.77 |
11.78±1.67** |
H |
59.95±14.39**# |
20.37±4.73**# |
8.80±1.97**# |
5.35±1.17 |
11.16±0.77** |
*P<0.05 **P<0.01 vs control group #P<0.05 ##P<0.01 vs model group
カンカニクジュヨウ抽出物はラット血液粘度を低下した。(P<0.05)
5. 考察
流動性は細胞膜の主要な特性のひとつで、細胞の構造や機能や状態に鋭敏に反応する。本研究では高塩分飼料飼育ラットの血圧、赤血球膜流動性および血液粘度について検討した。その結果、ラットを高塩分飼料で飼育することにより血圧と血液粘度は上昇し赤血球膜流動性は減少した。しかしカンカニクジュヨウ抽出物を投与した群では高塩分飼料飼育ラットの血圧が有意に正常化した(P<0.05)このことよりカンカニクジュヨウ抽出物が血圧を低下させることが示された。更に、カンカニクジュヨウ抽出物の中用量と高用量投与群では赤血球膜流動性が増加した。(P<0.01)また、低用量と高用量投与群では血液粘度 in 5s,30sが低下した。(P<0.05)
以上より、カンカニクジュヨウ抽出物には高塩分飼料飼育ラットの高血圧低下作用が認められた。
参考文献
- ChP.2005.Chemical Industry Press 2005:90.
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- Xujin Zhu,Hanchun Wen, The Effect of Rats’blood Pressure and Vasoconstriction in High Salt Diet. Journal of Guangxi Medical University:2005; 22(6):873~875
- Jinfen Lu,Chenxu Li. Effects of BYHW Decoction and its Effective Constituents on the Fluidity of the Cell Membrane in a Stroke-Modeled Rat Brain.
- Xiaomin Lu,Jinfen Lu. Crystal Structure and EPR Spectra of cis-Dioxo-molybdenum(V) Complex with o-Aminophenol.CHINESE JOURNAL OF CHEMISTRY,2002;20(6):617~621
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Guido RMMH,Aalt B.Protection against lipid peroxidation by a microsomal glutathione-dependent labile factor. FEBS 1983; 159:24 - Shuhua Ding,Xuanxuan Zhu,Guofan Cao.Reseach the rats’ mico-cycle and blood viscosity in Yeming keli. J Nanjing Univ Tradit Chin Med.2005;21(3):166-167