カンカニクジュヨウエキスの化粧品への応用

 カンカエキス末にメラニン産生抑制効果が見られた.メラニン生合成の律速酵素チロシナーゼの活性阻害効果をみた.チロシナーゼを用いて阻害効果を測定したところ, エキスおよび主成分で抑制効果が見られた.カンカエキスの経皮吸収性についてエキナコシド, アクテオシドの含量を測定したところ, 経時的な濃度上昇が見られた.

株式会社 成和化成, 2近畿大学 薬学総合研究所, 3京都薬科大学
○渡邊 諒子1, 村越 紀之1, 橋本 直哉2, 吉岡 正人1, 吉川 雅之, 村岡 修2

ハマウツボ科植物カンカニクジュヨウ (Cistanche tubulosa (Schrenk)R. Wight ) はベニヤナギ根部に寄生する植物で, 北アフリカ, アラビア, アジア諸国に広く分布している. 中国新彊ウイグル自治区では強壮剤や血液循環促進剤, インポテンツ, 不妊, 腰痛, 滋養強壮等を目的に肉質茎を昔から食している. カンカニクジュヨウの効果として, 最近, 含有成分中に血管弛緩作用を有するものも見いだされている3). このような背景のもと, カンカニクジュヨウは代替医療やサプリメントとして注目されている. また, カンカニクジュヨウは水分含量が高く, 乾燥や塩濃度に対する環境ストレスに強いことから新彊ウイグル自治区では, 自然環境保護の観点でタクラマカン砂漠の緑化プロジェクトに用いられている.

近年の化粧品売り上げから見ると, 老化防止を目的とした基礎化粧品, 日焼け止め化粧品などの機能性化粧品が増加してきている. これは, 消費者のアンチエイジング志向やクオリティーオブライフ(QOL)に対する意識の高まりとともに機能性化粧品へのニーズの高まりが大きな要因である.これらの現状を背景に食品関連企業や大学などの機関において新規機能性研究が盛んに行われている今, その研究結果を基に機能性化粧品として商品化する動きが活発化している.

今回, 乾燥砂漠地に生息するカンカニクジュヨウエキスとその主成分であるフェニルエタノイド配糖体であるacteoside(1), echinacoside(2)およびisoacteoside(3)について化粧品分野での有効性および製剤化方法を検討した.

エキナコシドechinacoside、アクテオシドacteoside、イソアクテオシドisoacteoside

エキナコシドechinacoside、アクテオシドacteoside、イソアクテオシドisoacteosi

1.マウスB16 メラノーマ4A5細胞を用いたメラニン生成抑制効果試験, チロシナーゼ阻害活性試験 (in vitro)

カンカニクジュヨウの化粧品素材としての新規機能研究の一環として, マウスメラノーマ細胞(B16 melanoma 4A5 細胞)を用いたTheophylline誘導メラニン産生阻害をエキスレベルで評価した. その結果, カンカエキス末(lot.20070122, 栄進商事(株)より購入)にメラニン産生抑制効果が見られた.

メラニン生合成の律速酵素であるチロシナーゼの活性阻害効果をみた. マッシュルーム由来チロシナーゼを用いて阻害効果を測定したところ, エキスおよび主成分で抑制効果が見られた.

2.   経皮吸収試験

カンカエキスの経皮吸収性を確認するため, エキス中に含まれるechinacoside (1), acteoside (2)を標的試料としてヒト三次元培養表皮モデル(Labcyte EPI-MODEL., (株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)がセットされたFranz型拡散セルを用いて試験を行った. 30 %メタノールに溶解させた試料をヒト三次元培養表皮モデル上に塗布し, レシーバー溶液に浸透したechinacoside (1), acteoside (2)の含量をHPLCにて測定した. その結果, レシーバー中において経時的な1, 2の濃度上昇が見られた.

3.   化粧品への応用

オゾンホールの出現による太陽紫外線の増加は高齢化社会の進行とあいまって化粧品分野における抗老化化粧品の要求に拍車をかけている. 老化の原因メカニズムにおいてはいくつかの説が提唱されているが, 近年最も注目されているのがHarmanによって提唱されたフリーラジカルと老化の関係である4). カンカの持つ美白作用, 経皮吸収性ならびに前演者が示した抗酸化作用は, 機能性化粧品素材としての有用であると考えられる. そこでカンカエキスを用いた皮膚用化粧料, 毛髪化粧料の製剤化について検討したので報告する.

参考処方として, 皮膚用化粧料である化粧水と毛髪化粧料であるコンディショナーの処方例を記載した.

《参考処方》

  カンカエキス含有化粧水 % (w/w)
グリセリン 3.0
1,3-ブチレングリコール 3.0
Euxyl PE9010 0.5
エタノール 5.0
クエン酸 適量
クエン酸Na 適量
精製水 残量
カンカエキス水溶液 5.0

 

 カンカエキス含有コンディショナー % (w/w)
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(25%水溶液) 3.0
セトステアリルアルコール 3.0
ステアレス-20 0.5
グリセリン 2.0
セイセプトH 0.3
カンカエキス水溶液 5.0
精製水 86.2

※化粧品原料として40 % (w/w) 1,3-ブチレングリコール, 2 % (w/w)カンカエキス粉末を精製水に溶解したものをカンカエキス水溶液とした.

参考文献

  1. Xie H, Morikawa T, Matsuda H, Nakamura S, Muraoka O, Yoshikawa M. Chem. Pharm. Bull., 54(5), 669-675 (2006).
  2. Yoshikawa M, Matsuda H, Morikawa T, Xie H, Nakamura S, Muraoka O.Bioorg. Med. Chem., 14(22), 7468-7475 (2006)
  3. 村岡 修, カンカ(Cistanche tubulosa)とその新規血管弛緩作用成分, 食品と開発, 41, 76-78 (2006)
  4. Harman D. ‘‘Free Radicals: Aging, and Degenerative Diseases’’, ed. by Johnson, J. E., et al. 3., Alan., R. Liss., (1986)
  5. Muraoka O, Morikawa T, Ninomiya K, Murakoshi N, Sakamoto K, Yoshioka M, Yoshikawa M., International Federation of Societies of Cosmetic Chemists Congress. Barcelona. (2008)
  6. Kitao S, Hasegawa T, Morikawa T, Ninomya K, Yoshikawa M, Hashimoto N, Sakamoto K, Yoshioka M, Muraoka O., International Federation of Societies of Cosmetic Chemists Congress. Barcelona. (2008)