ホータン地区カンカニクジュヨウ人工栽培産業の開発と研究

【要旨】カンカの人工栽培は森林面積の拡大につながり、生活環境を明らかに改善させる。ホータン地区の農業生産発展により、経済、生態、社会効果を一本に集約させ、ホータン経済の活性化の起爆剤となる。これはホータン地区の農牧民にとって貧困から脱出する新しい活路となる。

馮堅冰、趙忠久
新疆ウイグル自治区ホータン地区科学技術局

カンカニクジュヨウ[Cistanche  tubulosa (schenk)  wight]は俗名を紅柳大芸(以下通称カンカ)と言い、寄生植物に属す。カンカは多年生の高等寄生植物であり、檉柳属植物である紅柳の根上に寄生する。
カンカの寄主である紅柳は、ホータン地区に広く分布している。紅柳は広大な砂漠中に天然に生長する防砂、治砂郷土の樹種であり、非常に強い抗旱性を備えている。カンカは砂漠地区に生える天然紅柳の根部に寄生する貴重な食薬両用植物である。
ホータンでは、人工栽培法を採用し、カンカの種子を人工栽培された紅柳の根上に接種(種付け)して、栽培して育てたカンカを収穫している。現代技術を利用して天然の紅柳とカンカを人工栽培法で育てることにより、広大で不毛な土地を有効利用して、欠点を利点に転換させた結果、紅柳とカンカはホータンの荒漠地区で確かなな生態効果と社会効果、経済効果を生み出している。

1.カンカの生物学研究

1.1カンカの形態的特徴(図1を参照)

カンカの形態的特徴

図1 カンカの形態的特徴

カンカの生長発育段階は主に蘆頭、肉質茎、つぼみ、花、果実、種子の6部分で構成されている。

1.2カンカの生長習性

野性のカンカは我国では新疆にわずかに分布しており、タクラマカン砂漠周辺地区が比較的多い。カンカが育つには土地条件が深く関わっていると言われているが(Geoherbalism)、タリム盆地の豊富な光熱資源、乾燥、通透性の高い土砂が良好な生長環境として野生のカンカの広域分布の最も主要な原因となっている。

1.3ホータン地区のカンカの分布と生産量

ホータン産カンカの利点はタクラマカン砂漠南部のホータン地区が上述のような、典型的環境条件を備えているところにある。野生の紅柳の分布面積は225万畝であり、そのうち、135万畝の紅柳にカンカが寄生している。ホータン地区には七県と一市が均等に分布しており、ケリヤとニヤに人口が多い。
このうち、80%前後の野生の紅柳の根にカンカは寄生しているため、ホータン地区の野生カンカの生産量は最も高いと言える。
また、専門家の研究によると、中国ではホータン地区産のカンカの有効成分含有量が最高であることが判明しており、カンカには地域条件との関連性があると言える。現在、野生のカンカの年間採集量は約300トンであり、今後は最大で400トンのペースまで採集できると推測されている。

1.4    カンカの有効成分の機能性

カンカは紅柳の根に寄生し、砂漠地区に生長する食薬両用植物である。抗老化、抗老年性認知症、健康長寿等の作用があり、“砂漠人参”の美称がついている。ホータン地区のウイグル長寿老人の長寿の秘訣の一つと言われている。

1.5自然界のカンカの成長過程(図2を参照)

自然界でカンカは、5~6月頃に地面に伸びだし、花の芽の分裂を開始する。カンカは開花から結実して種子が完全に成熟するまで2~3ヵ月の時間を要する。種子が果実から砂地上に落下後、砂風に乗って、種子は容易に他の紅柳の付近にたどりつき、種子は流砂と共に紅柳の周囲に積もる。7、8月はちょうど洪水が最も多い季節である。洪水によって大量の泥砂が紅柳の周囲に運ばれるため、カンカの種子はさらに深く砂中に埋まることになる。一年後、紅柳の周囲の土砂はますます積もって高くなるため、種子はますます深く埋まる。紅柳の根元は砂を被って埋まりながら、頂上部は生長を続ける。砂に埋もれた紅柳の枝は水分に触れると容易に毛細根が発生し、四方に向かって生長していく。
カンカの種子は水分の影響下、長時間、特殊なにおいを発生させる。この時、紅柳の根系はこのにおいに非常に敏感に反応し、種子のいる方向に向けて生長して、寄生関係が発生する。根系とカンカの種子が完全に融合後、蘆頭を形成する。
この時、根系は保有していた水分と栄養を紅柳の枝葉に与えて生長させる機能を失う。蘆頭は根系から充分な栄養と水分を吸収した後、生長と分裂を開始し、次第に一つずつ大小が違う肉質茎が萌え出る。

 紅柳  カンカ  ←  蘆頭
 ↓  ↓  ↑
 砂に埋まる  開花  ↑
 ↓  ↓  ↑
 水分  種子  ↑
 ↓  ↓  ↑
 根を生やす  砂に埋まる  融合
 ↓  ↓  ↑
 →  →  遭遇  →  ↑

図2 自然界のカンカの成長過程図

2.人工栽培カンカの技術研究

1999年、ホータン地区に人工栽培カンカの研究課題グループが成立した。まず最初にホータン地区の野生紅柳とカンカ資源について調査研究を行い、野生紅柳とカンカの主要な生物学的特徴を明らかにし、人工栽培研究のための研究データをまとめた。2001年より人工栽培カンカの科学技術と基礎研究を開始した。最良の寄主植物である紅柳品種の苗を育て、立地条件を変えながら、紅柳の様々な人工栽培形式について研究を進めた。また、様々な調合法による接種紙を用いて接種試験を進めたり、段階別に接種試験を行ったりするなど、数々の試験研究案の下に研究を進めた。最終的に寄生周期が短く、接種率が高く、接種点が多い接種技術を見出すことができた。

2.1主要な技術の新しい特徴

2.1.1.
研究で見出されたカンカの生長接種に適合する調合接種紙は、一年以内に接種が成功するなど、接種率が高く、接種点が多い特徴を持つ。

2.1.2.
紅柳の根系は放物線様に下に向いて生長する習性を持つ。課題グループの研究の結果、調合接種紙の誘導で、紅柳の根系は明らかに向きを変えて接種紙の位置に向かって生長し、接種紙上のカンカ種子と寄生現象を発生させることが判明した。
その特徴は、紅柳の根系が生長して接種紙の上方または側面まで近づいた時、紅柳の根系の前端は元の生長方向を変えて、接種紙の位置に向かって直線的に生長する。土壤内の根系には明らかな曲折(大部分がおよそ90°の直角に曲がる)現象が起きる。接種紙の位置と紅柳定植の水平距離が近いほど、紅柳の根系が直角に曲がって接種紙に向かって生長する現象は明らかに現れる。

2.1.3
研究により、1m×1m(株間距離)×3m(操作範囲)または0.5m×1m×3mの寛窄行の造林形式を算出し、畝毎に330-600株前後の紅柳を定植した。これにより、面積単位の紅柳の定植株数およびカンカの接種と採取数が保証されるようになった。

2.1.4
我々が編み出した“一次性接種法”の方法は、紅柳の定植とカンカの接種が同時進行できる方法であり、一年目で効果が見られ、接種率は平均70%以上に達し、寄主である紅柳の生長に影響を与えない最良の方法である。

2.1.5 ホータン地区のカンカの人工栽培は、野生のカンカの生長習性に従って、生産管理されている。化学肥料や化学農薬は一切使用せず、完全な環境緑化に有益な栽培管理であり、国際上の有機生産品の基準にも適合している。

2.2 人工栽培カンカの生産量

人工栽培カンカは、栽培された年より一年以内に収穫が得られる。一年目にして一畝当り平均215kgのカンカ植物を生産することができる。カンカは多年生の寄生植物であるため、科学的管理と採取の下、二年目には、平均で年に一畝当り500kgのカンカ植物が生産できる。以上の基礎経験から総括すると、もし寄主である紅柳の定植株を元来の1mから0.5mの距離に変えた場合、紅柳の定植とカンカの接種の密度は倍近く増加することになり、一畝当り1000kg以上の生産量に達すると考えられる。

3.カンカ人工栽培の今後の展開について

国内外の市場において、カンカの需要量は高まりつつあり、カンカ人工栽培産業の急速発展を促進している。ホータン地区にはカンカ人工栽培に適した土地が100万畝はある。今後の発展計画においてはGAP基準を満たしたカンカの人工栽培基地を30万畝建設する計画を立てている。さらにその後は全地区においてカンカの人工栽培基地を累計70万畝にまで発展させることを計画している。

ホータン地区のカンカ人工栽培は栽培面積を拡大し続けるだけでなく、同時に栽培の産業化も実現させている。また、今後は加工業を発展させることもじゅうような方向の一つと言える。ホータン地区でカンカ人工栽培の代表企業である和田帝辰沙生薬物開発有限公司は、民豊県において2000畝のカンカGAP基地を建設した。この基地は2006年に米国のOCIA(有機農場)有機認定証を獲得している。

カンカ人工栽培の代表企業である和田帝辰沙生薬物開発有限公司は2006年末に2000万元を投資してカンカエキスを抽出する加工工場を建設した。加工技術の研究応用と、国内外市場の開拓を進めることにより、今後、ホータン地区のカンカ産業を更に発展させる核心となるであろう。

カンカの人工栽培は、カンカの寄主である紅柳を人工的に定植するため、広大な面積を使用する。この人工栽培により、森林面積の拡大につながり、風砂の被害を有効的に阻止でき、生態環境を明らかに改善させられる。これはホータン地区のオアシスの農業生産発展の有力的な保護となる。

カンカの人工栽培を発展させることは、経済、生態、社会効果を一本に集約させた事業である。本産業はホータン地区の21世紀の支柱産業となり、ホータン経済の全面活性化の起爆剤となるであろう。これはホータン地区の農牧民にとって貧困から脱出する新しい活路となるであろう。